社報:時告第二号

郷土の祈りを、次世代の幸福へ

〜「なかとりもち」として歩んだ一年と、御厨の未来〜


【地域の皆様への感謝】

令和七年四月一日に永原大神宮の宮司を拝命し、早一年が経過いたします。急転直下の就任であり、右も左もわからぬ若輩者ではございましたが、各地域すべての神事を滞りなく執り行うことができました。

これはひとえに、それぞれの地域で境内を清め、古くからの祭礼を大切に守り続けておられる氏子の皆様、そして地域の皆様の温かいお力添えがあってこそです。本来であれば拝眉の上御礼申し上げるべきところではございますが、この紙面をお借りして、衷心より厚く御礼申し上げます。


【明治十五年、御厨の人々が灯した光】

さて、当宮は数年後に創建百五十年という大きな節目を迎えます。その起源である明治十五年(一八八二年)前後は、文明開化による急激な社会変化に加え、コレラなどの疫病が蔓延し、多くの人々が不安の中にあった時代でした。

そのような苦難の中で、この北駿、すなわち「御厨(みくりや)」の人々が、自らの手で伊勢の両宮をこの地に勧請しました。それは国から命じられたものではなく、郷土の平穏を願う人々が、自分たちの「心の拠り所」を自分たちの手で取り戻そうとした、尊い自発的な歩みであったと歴史から紐解くことができます。


【学びは、皆様の想いを支えるために】

私は現在も神道宗教学会に所属し、神社の歴史や制度、神事の意義について学びを深めております。それは、学問的な正しさを皆様に押し付けるためではありません。先人が守ってきたこの大切な伝統を、どのようにすれば現代、そして次世代へと適切につなげていけるのか、その最善の方法を模索し続ける責任があると感じているからです。

しかし、どれほど学びを深めても、神社の主役は地域の皆様であることに変わりはありません。私の知識はあくまで土台に過ぎず、最も尊重されるべきは、皆様からの「次につなげるためにこうしたい、ああしたい」という生きた声です。


【「つながり」が幸福を生む科学】

近年、社会学的な研究において、「祭りや地域行事への参加といった社会的なつながり(ソーシャル・キャピタル)が、人々の主観的幸福度や安心感を高める」という研究結果が報告されています。

皆様が「神社のことに関わってよかった」と心から感じていただけるような場を作ること。そして、そこから生まれる地域の絆こそが、私たちの幸福の源泉であると確信しております。結果として社会的コストの低下、住みよいまちづくりに寄与するものと考えております。


【結びに代えて:「なかとりもち」の願い】

私が奉仕している各地域のお社は、皆様お一人おひとりの宝物です。神職の役割は、神様と皆様との間を取り持つ「なかとりもち」に過ぎません。

これからも、皆様と共に「楽しい」という感性を大切に分かち合いながら、皆様の声を第一に、地域の誇りであるお社を守ってまいる所存です。

それぞれの土地を守る氏神様が、皆様の暮らしに寄り添う存在であり続けるよう、静かに務めてまいります。今後とも変わらぬご崇敬とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

永原大神宮 宮司 勝又 啓

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